弘川寺探訪(2) 桜回廊の巻


 弘川寺に到着しましたが、先に境内には上がらず、とりあえずその脇から入れる本坊へ行ってみることにしました。
 ご覧の通り、桜はほぼ満開。風が吹き抜けるたびに桜が静かに舞っています。

   

 非常に背の高い桜。よくある桜並木ばかりを見慣れている者にとっては、これだけでも結構な驚きです。

        

 本坊入り口・庫裡門をその下の方から。白い壁と桜が映えます。

  

 拝観料(五百円)を払って靴を脱ぎ、順路に沿って歩きます。
 まぁこの庭の整ったこと。日本庭園とか詳しくないですが、踏むたびに気持ちいい板の廊下とか、張り出した縁側とか、飾られた写真家さんによる弘川寺の写真などに、しばし足止めさせられてしまいます。
 また、入ってすぐの場所に、天然記念物に指定されている海棠(かいどう)の木があります。僕が行った時は五分咲きくらいでした。四月の中頃ぐらいに満開で見頃を迎えるとのことで、桜よりもより鮮明な赤い花が咲き誇るところをまた見てみたいな、と思ったのでした。 

   

 本坊から廊下づたいに篠峯殿へ。
 順路になっている部屋には、長い長い長い写経が広げて飾られてあったり、また両腕を切断された尼(前は女妓だったそうです)が口で筆をくわえて記した写経などが飾られていたりします。一文字一文字、丁寧に記された阿弥陀経や般若心経が、うまく読めないのになにか不思議な感動を訴えてくるのは、それが過去に、人が思いを込めて書いたからなんだよなぁとか、ガラにもないことを考えたりします。
 普通に考えて一回も間違えずに書き上げるなんぞ、自分には不可能です。

   

 こちらが西行記念館。中には、西行直筆といわれている消息(手紙)だとか、西行に心酔して障害を生きた似雲法師の絵や文章、西行の木像、絵、それから西行に関する古今東西の本を集めた西行文庫などがあります。西行がこの寺の門をくぐった頃に、門に掛かっていた額なんかもあったりします。もちろん撮影禁止。
 僕は即席カメラで写真を撮っていたのですが、観光客らしきおじさんおばさんがちらほらといて、その多くが「俺はセミプロだゴルァ」って感じの一眼レフばかりを提げてばしばし撮影していたので、なんだか居心地悪かったです(笑)

   

 西行記念館より。山の上なので風が吹くたびに桜の枝が大きくしなり、無数の花びらを舞い散らせます。それこそ一眼レフとかならその瞬間も映し出せるのでしょうが……(笑) ま、多分「あの」空気までは切り取ることができないだろうなぁ。

   

 廊下からもう一枚。日本の建物って、やっぱりこういう絵が似合います。柱の黒ずみが歳月を語るって奴です。

   

 こうして拝観終了。ちなみに、受付ではお守りや葉書、写真とかも買えたりするはずです。あと、帰りのバスの時刻表も掲載してくれていますので、弘川寺での行動時間の目安になるはずです。

   

 さて、改めて弘川寺境内へ。
 晴れていたのが幸いしたのか、家族連れもちらほらと見掛けます。
 実は二日後に、弘川寺では桜祭りが開催される(された)ようでした。お祭りの様子も見てみたかったけど、まぁ最初ぐらいは静かに花を見上げていたいと思ったので、別に問題なかったですが。来年はお祭りにあわせてくるのもいいかもしれません。

   

 弘川寺本堂。桜が掛かってとても良い感じ。
 ちなみにここは天智天皇の頃に役行者によって開かれたふるーいお寺で、その後関わった人も、天武天皇、弘法大師などなどビッグネームばかり。

   

 護摩堂の前に掛けられていたすやざくら。とにかく色が華やかな桜です。なんでも南北朝時代に、南朝の武将(楠木正成の後胤)が弘川寺で激戦をした後、昔あった境内の大桜の下で自刃したという話もバックに持つ桜です。そういわれてみると何となく血の色を意識しなくもありませんね。
 おじさん達がしきりに写真やビデオを撮っていました。

   

 本堂脇の階段を登っていくと、似雲法師が建立した西行堂があります。
 中には西行の似像があるそうです。
 その林の向こうには……

           

 先程歩き回った本坊が、桜に埋もれるようにして立っています。

   

 ここが西行墳。「願はくは…」の歌にあるとおり、杉と桜に囲まれた不思議な空間にも桜の花が舞い散り、水たまりにも花びらがまぶしてあります。墓の左右にも綺麗に備え付けられた桜の枝があるのが解りますね。
 カメラ視点の横には、似雲法師のお墓もあります。

 さて、ここから更に階段を登ると西行桜山。
 ここは最近になって整備された周遊道で、約500メートルの山道だと書いてありました。正直桜は沢山見たし、足も疲れていたし、一瞬どうしようかと考えたのです。しかしバスの時間にはまだ大分ありましたし、ここまで来たら最後まで見ないと、と気力をもう一度出し直して、少しぬかるんだ階段を登り始めました……