「HMO」というジャンルの代表として。YMOという遺伝子の最新の果実として。(10/01/09) (CD「Hatsune Miku Orchestra」レビュー) ニコニコ動画を『HMO(初音ミクオーケストラ)』というタグで検索すると、200以上の動画がヒットし、今も少しずつ増え続けている。 これらすべてをHMOとかの中の人が作ったわけでは勿論無く、いわば有名無名の初音ミクユーザー達によって自然発生的に作り上げられた、一種のコミュニティだ。 YMOにはテクノポップの代名詞として消費され尽くした面とは別に、Midi普及期以降、アマチュアDTMユーザー達が最初に打ち込む「テクノの教本」としての側面をも持っていたのだが、テクノ思想の結晶のような「Vocaloid」と動画投稿という方法の登場によって近年それが再度現出した。 その結晶がこのCDであるという観点も可能だと思う。90年代にJASRACの規制によってMidiが一度死に、坂本龍一が抗議行動を行ったことなどを振り返ると、時間の流れとその帰結に因果めいたものを感じざるを得ない。今回CDに収録された曲の多くは今もニコニコ動画に登録されており無料で聴くことが出来る(各動画のコメントでどう受け止められているか見てみるのも興味深いだろう)のだが、その上なお商業販売にまで辿り着いた作者の力量が抜きん出ているのは疑いようがない。ただ、HMOが他の安易なカヴァーによる企画盤などと異なったバックボーンを持っている事はご理解いただけることと思う。 他のレビューにある通り、このCD単体では「アフター・サーヴィス」の強い影響下にあるという指摘は正しい。ただそれも単純なトレースではなく、例えば「ロータス・ラブ」のアレンジなどは90年代における細野晴臣のアンビエント指向への返答であることは明白だ。 YMOは様々に受け取られ、様々に変容して新譜が出ない今も「作られ続けている」。 かつてテイトウワや、槇原敬之や、高野寛らがそうであったように。 今、HMOとかの中の人がそうであるように。 YMOは音楽製作への欲望を刺激する。このCDから受け取った何か(どういう形であろうともそれは確実にある筈だ)がもしあなたを刺激し、初音ミクを使う決意をし、動画をUPするちょっとばかしの勇気を持ったなら、次のHMOはあなたによって示されても不思議ではないのだ。 「HATSUNE MIKU ORCHESTRA」は、30年経っても脈々と受け継がれるYMOの遺伝子を「彼女」が高らかに唱う、懐かしくも新しい一枚である。 追記:2025年でもYMOは作られ続けている。 |
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