高校三年生。
俊平の働くパン屋・もみじベーカリーの常連。
しかし、その目的はパン以外にあるらしいのだが。
生真面目で少し控え目。




山吹 ありさ

Yamabuki Arisa


恋に揺れる少女。
自分の抱いた気持ちを
もう一度、確かめるために。



『・・・もしもし、・・・ありさです。
あの、こんにちわ。お久しぶりです。今、電話・・・大丈夫ですか?
・・・いえ、そんなに大した話じゃないんですよ。
ただちょっと、話したくなったってだけで・・・・。
何してましたか? ・・・え、寝てたんですか?
あ、それは・・・ごめんなさい。・・・いいえ。

『わたしのこと、聞きたい・・・ですか。そうですね。
毎日、楽しいですよ。学校は行くだけでなんだかうきうきしちゃいますし、そんな顔してると
遙が・・・あ、遙ってのはわたしの親友なんですけど。
「ありさはいっつものーてんきな顔して、お気楽よね」なんて、突っ込まれちゃったり。
でも、結構大変なんですよ。そろそろ受験も本番だし、
部活の後輩に指導したりとか・・・え? もう秋なのに何やってるんだ、って?
でも、大切なものは出来る限り手放したくないじゃないですか。
部活も、いつもの生活も。
体重が気になっても、コンビニでお菓子を買っちゃうのと同じですよ。
あなたには、そういう経験、ありませんか?

『大事な物・・・というか、場所が、もう一つあります。
自宅からも学校からも遠くて大変だけど、最近いつも通っている場所があるんです。
ふふふ・・・うん。本当に大好き。
坂の途中にある、小さなパン屋さん。
目立たないんだけど、そこにいるだけで安心するっていうか・・・。
店長さんっていうか、切り盛りしてる人が、すっごく美人で可愛いお姉さんなんですよ。
あなたも、一度いったらきっと気に入ると思いますよ。
もっちろん、パンのおいしさも抜群ですしね。
・・・え・・・それだけじゃないだろう、って?
・・・・・・それは、秘密です。ふふふ。

『・・・ありゃ、結構話しちゃいましたね。
眠気、取れちゃいましたか。ごめんなさい。でも、外はこんなに晴れてるんだし、
窓を開けてみるのもいいかもしれませんよ。
わたしですか? わたしは今・・・
あの空を、見上げています。
掠めていく秋の風に吹かれながら。

『・・・また、電話しますね。
はい、ありがとうございました、お元気で・・・バイバイ』


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