高校三年生。主人公・沢村俊平の幼馴染み
でもある。物語の冒頭で、二人は数年ぶりの
再会を果たすことになる・・。
スケッチブックに絵を描くのが趣味で、
その先に自分の将来を考えている。
基本的に甘え気味な性格。

相沢 彼方
Aizawa Kanata


風とスケッチブックの少女。
彼女が見たユメは、
あの空の向こうに。

えっと・・・初めまして、相沢彼方です。
わたしは、人とお話しするのってあんまり苦手じゃないんだけど、こういうところで一方的におしゃべり
するっていうのは、やったことないし、あなたの反応も分からないし・・・ちょっとやりにくいかな(汗 
ねぇ、相手の顔を見てお話しするのって、楽しいでしょ? 
自分の言葉が、相手の表情を少しずつ変えていく。
そりゃ、中にはちょっとやそっとじゃ笑ってくれない、むっつり顔の子だっているけれど。
・・・でも、そういう人もひっくるめて、人間だもんね。
わたしは、そういう人の間にいられて、良かったと思う。
いろんな反応を感じてる時、自分が人間だな、って、一番深く感じられるから。

・・・こういう話でもいいのかな?
あ、そうだ。
最近はようやく、強い陽射しの合間に柔らかな風が吹き始めて、そろそろ秋の予感が
近付いてきたって感じ、するよね? 
あなたの町ではどうかな? 
まだまだ暑い?
それとも、すっかり涼しくなって、もう半袖じゃいられない?

じゃ、唐突ですが、彼方からのお願いです。
できれば、この合間の季節を楽しんでください。
うだるような猛暑も、手の先にしびれる寒さも、留まるものだけど、
この変化の季節はきっと、日々の生活の上で簡単に通り過ぎてしまうはずだから。
今しか感じられないことって、結構多いと思います。
たとえば、自分の足音だって、秋の足音が輪唱して、ステップを踏むように感じられる、かもね。
むぅ。今、笑ったでしょ。
そりゃ、冷たい風が吹いて、枯れ葉が舞ったり、金木犀や秋桜が咲いてたりとか、
焼き芋屋さんが走り始めたりとか、コンビニに肉まんが並んだりとか、
そういうのがあったら誰がなんていっても、「秋だな」って感じはするけどね。
それだけじゃないよ。秋の訪れを教えてくれるのは。
普段はどーだっていい、なんでもないことがきっと、あなたに最初の秋を、お届けします。
その、何でもないことを・・・ほんのちょっとだけ、大切にしてね。

・・・よく分からないお話でごめんね。だってぇ、いきなり喋れって言われて、準備も何もしてなかったん
だもん・・・え、なに俊平くん、人のせいにするなって? 仕方ないでしょ、まったくぅ。
・・・あ、ごめんなさい。
というわけで、わたしからのお話はこれでおしまいです。
出来れば近い内に、もう一度お会いしましょうね・・・そう、わたしたちの「秋」の中央で。

じゃ、またね。ばいば〜い。

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